川添です。
ここ20年くらい、日本の司法の世界はめまぐるしく変化しています。
20年前といえばちょうど私が大学生になるくらいのころ。
裁判をもっと使いやすくするために民事訴訟法の改正があったり、明治のころのカタカナ交じりの法律が口語化されたり。
そして集大成とも言うべき司法試験制度の変更があり、その中核に法科大学院(ロースクール)の創設があります。
私が法学部に入学した平成7年は、ロースクールを日本に作ろうかという議論がまだ始まったころではなかったかと思います。
「文系人間の自分が行くのは法学部」くらいの認識で法学部に入学したわけですが、確か入学式の日、司法試験指導に熱心だった某教授が「司法試験は国家試験の中でも最難関試験だからこそ、それに合格した弁護士(法律家)は国民から信頼されるんだ。だから司法試験を目指せ!」というような話を聞いた覚えがあります。
当時の司法試験の合格率は3%程度、合格者は年間1000人程度しかいませんでした。
それから大学を卒業した浪人時代、何年後かにロースクールがスタートすることが決まりました。
法学部卒業生が2年間ロースクールで学び、ロースクール卒業生の7割もが新しい司法試験に合格するとのふれこみでした(合格者は3000人と意気込んでいました)。
ロースクールに入学するのは難しいかもしれないが、新しい司法試験それ自体はもはや最難関国家試験ではなくなるのです。
単なる激励の意味もあったでしょうが、最難関試験を目指せと言っていた某教授は、受験生だった私たちに「新しくなる前の司法試験に合格しろと」強く言っていました。
そして・・・司法試験制度が変わる前の平成14年に無事合格することができました。
そういうわけで昔の試験を通過してきた者だからかもしれませんが、新しい司法試験制度、ロースクールのあり方には当初から反対でした。
どの辺りが反対なのかは、また別の機会にでもこのコラムに書かせてもらうことがあるかもしれません。
そんなロースクールの入学者は年々減少し、ついには法学部の志願者が減少しているとのニュースまで聞くようになりました。
バブル崩壊後の不景気が続く中でただ単に文系卒業者の就職が厳しくなった一環だったのかもしれませんが、ロースクールの不人気、ロースクール卒業生の末路というような特集が組まれるなど、これらのことによって法学部離れに拍車がかかったというような報道をされるようなこともありました。
法学部卒業生の1人として、「法学部の凋落」みたいなタイトルを見かけるとさびしい思いがしてなりません。
法学部卒業生が全員ロースクールへ進学するわけでもなく、ロースクール進学はほんの一部に過ぎません。
そんなこともあり、法学部で勉強することのメリットを指摘しておきたいと思ったのが今回のコラムの目的になります。
あくまで個人的な意見ではありますが、法律家を目指さない人であっても、民法と会社法をそれなりに学んでおくことは大学を卒業してから実社会でもとても役に立つことではないかと思っています。
また、民事の裁判の仕組みを理解しておくのも、実際に自分自身が裁判をするかしないに関係なく、必要なことではないかと思うのです。
法律相談を聞いていて依頼を受けるところまで行かずに相談だけで終わることもたくさんありますが、契約というものがどういうものであるかわかっていれば自然と結論が出るケース(相談者にとって問題とならないケース)がたくさんあります。
このレベルになってくると、わざわざ法学部で勉強するというより前の段階、中学校や高校での法教育のあり方も検討すべきところです。
少し高度に法律をかじるとして、皆さんが就職する会社がどういうものであるかは会社法が定めているわけです。
株式投資でもしようというとき、そもそも株式が何たるかはやはり会社法を勉強していないとわかりません。
現代社会では何でもかんでも法律で定められています。
その基本のところ、具体的な法律としては民法や会社法を学ぶだけでも、法学部で学ぶ意義は大きいのではないかと思います。
弁護士・裁判官・検察官になろうと考え始めるのはそれからでも遅くないと思います。