谷田です。弁護士という仕事をやっていて一番大事だと思うのは，やはり「相談者の方に分かりやすい説明をする」ということだと思います。
特に私の場合，大学時代に家庭教師としてたくさんの教え子を受け持ってきたこともあり（思い出せるだけで１６人，実際はもっとたくさん教えたかと思います。）そのときから「どのように説明したら，相手にうまく伝わるか」を意識してきました。家庭教師の経験は，今の弁護士の業務に生きていると思います。
今回は，「相手にうまく説明するコツ」について，自分なりに思ったところをちょこっと書いてみようかと思います。すごく当たり前の，しょーもないことばかりですが・・・逆に言えば，誰でもすぐにでも実践できることばかりです。
（本格的に説明のコツを学びたい方は，その手のビジネス書を参考にした方がいいかも知れません）
１，ゆっくりとしゃべる
なんじゃそらと言われそうですが，一番大事なことかも知れません。
説明というのは，「ある物事を分かっている人が，その物事について分かっていない人に伝える」という作業です。なので，話し手にとってはちょうどいい説明のスピードでも，聞き手にとっては早く聞こえることが多い（というか，間違いなく早い）のです。
説明する側は，普段の７割～８割くらいのスピードで話すようにすると，聞き手は置いてけぼりを喰らわなくて済みます。
私は元々関西出身とあってか生来早口のため，更に意識して話すスピードを抑えています。
２，たまに，聞き手に質問をぶつける
聞き手というのは，説明を理解できなくても「理解できたふり」をしてしまうものです。（特に，家庭教師をやっていたときの教え子にこの傾向が顕著でした）
なので，聞き手が理解できているかどうかを，聞き手のしぐさ（相槌を打っているとか）で判断するのは無意味です。分かっていないのに分かったふりをしているだけかも知れません。
説明したいテーマが一段落したところで，「もし，説明したことがわかっていたら答えられるような，簡単な質問」をぶつけてみましょう。その質問に答えられないようであれば，そのテーマについてまた最初から説明をするべきです。無理矢理次のテーマに移って説明を続けてしまうと，ますます聞き手は分からなくなってドツボにはまってしまいます。
３，たとえ話はほどほどに
分かりやすく説明をする工夫の一つとして，「たとえ話を引き合いに出す」というのがありますが，あまり多用するとかえって訳が分からなくなります。
そもそも，「説明したいテーマにしっくりくるたとえ話」というのはそんなにたくさん転がっているわけでもないですし，たとえ話をうまく引用するのにはかなりの技術が必要です。また，たとえ話自体が難しいと，そのたとえ話の解説をする羽目になり，かえって説明の手間が増えてしまいかねないのです。
よほどしっくりくるたとえ話でない限りは，多用しないことをお勧めします。
４，専門用語は使わない
もっと上の方に持ってくるべき当たり前のことですが・・・専門家にしか分からない用語を，一般の人に連発するのは厳禁です。
どうしてもその用語を使わないといけないのであれば，事前に「専門用語をどのように言い換えて説明するか」を決めておきましょう。（説明の場でアドリブで考えると，かえってわかりにくい説明になることもあるので，事前の準備は大事です）
いつぞや，他の弁護士が，知人Ａ（サラリーマン）にお金を貸したのに返してもらえなくて困っている相談者の方に対し，「債務名義を取って給差（きゅうさし）をかければいい！」と早口でまくし立てているのを見かけたのですが，多分相談者の方には説明したいことの１%も伝わっていなかったんじゃないかなと思います。
ちなみに，この弁護士が言わんとしたところをほぐすと以下のような感じになります。
「まず，Ａさんに対して，お金を返してくださいという裁判を起こします。証拠がちゃんとあれば，裁判所はあなたの言い分を認める判決を出してくれます。いわば，Ａさんからお金を取り立てる裁判所のお墨付きのようなものです。このお墨付きを使って，Ａさんが勤務先からもらっているお給料を差し押さえてしまいましょう。給料全額を取り上げることまではできませんが，４分の１までなら差し押さえることができます。そうすると，今後はAさんの勤務先が，Ａさんに払うはずだった給料のうち４分の１を，あなたに払ってくれるようになりますよ。」
という感じです。
これをゆっくりと話すわけですから，当然説明に時間はかかりますが，「説明が全然伝わらない」よりはマシですよね。
とまあ，後半はだいぶまとまりが無くなりましたが，人に説明をする機会が多い方の参考にして頂ければ幸いです。
