ブログ初担当となる川添です。
これからは弁護士の業務に関連することを書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。
「専門は刑事事件ですか?」
依頼者の方から聞かれることがよくあります。
確かにテレビドラマで弁護士が出てくるときは刑事事件がらみのときが圧倒的に多い気がするし、弁護士の仕事を大まかに“刑事(事件)と民事(事件)”と分けることからすれば、世間一般の方はほとんどの弁護士が手持ち事件の半分くらいは刑事事件をしているのだろうと考えているのかもしれません。
あるいは弁護士の半数は刑事専門なのではないかと誤解しているのかもしれません。
実際のところは、宮崎県内では私の知る限り”刑事専門”の弁護士はいません。
刑事裁判では被告人(罪を犯したとして起訴された人)は弁護人を選任することができますが、自腹で弁護人を選任できない人には国が弁護人をつけてくれます。
自腹で選任した弁護士を私選弁護人、国が選任してくれた弁護士を国選弁護人と言います。
国選弁護人が国からもらえる報酬は1件数万円程度、私選弁護人の報酬は契約次第なので何十万円~何千万円など何でもありです(億ということもあるそうです…)。
大都市では「刑事専門」を謳い、あるいは「元検察官」の肩書きを宣伝して、刑事事件だけを扱う弁護士もいますが、国選事件ばかりの宮崎で刑事だけでやっていくのは至難の業です。
私の刑事事件の割合は、あくまで感覚的ですが、事件数にしたら全体の10分の1くらい、収入にしたら20分の1くらいでしょうか。
ここから先は主に国選事件の話になります。
ひとたび弁護人に選任されてしまうと、こちらがどれだけ仕事が詰まっていて忙しいかとは無関係に、しばらくは刑事事件中心に業務が進むということになります。
手持ちの民事事件はある程度弁護士のペースで仕事を進められますが、刑事事件は弁護士の予定とはほとんど無関係に進んでいきます。
その上報酬が安いということになれば、進んで刑事事件を担当したいという気にはなりません。
一生懸命やればやるほど赤字になります。
それでも多くの弁護士が刑事事件を担当しているのは、刑事弁護を弁護士の使命であると感じている弁護士が多いからだと思います。
「どうして悪い人の味方をするのか?」
こういう疑問を投げかけられることもよくあります。
犯人として起訴された人全員が真犯人とも限りません(実際に冤罪が明らかになるケースもたまにあります)。
本当に真犯人だとしても、全部が全部死刑になればいいわけでもありません。
凶悪事件では被害者や遺族は犯人の死刑を望むでしょうし、検察官や裁判官もその方向に流れてしまうことも考えられます。
でもそれが重すぎるとしたら、弁護人は適正な量刑を求めて争っていかなければなりません。
国が人を裁くためには多くのルールが決められています。
そのルールが守られているのかをチェックしていくのも弁護人の仕事になります。
かつては弁護士になる前の司法修習という研修では、国から給料をもらいつつ勉強させてもらっていました。
そのため、研修期間中には「国選弁護をやって恩返ししろ」と教え込まれました。
刑事弁護は日本国憲法にも登場する数少ない仕事でもあります。
そんな使命を感じつつ、多くの弁護士は刑事事件をこなしているのだと思います。
ここまでえらく立派なことを書いてきましたが、最近は事情が変わりつつあるようです。
司法制度改革の結果、研修期間中の司法修習生には国からの給料がなくなってしまいました。
おそらく今では「恩返ししろ」とは教えていないのでしょう。
仕事のない弁護士による国選事件の取り合いが大都市では起こっているようです。
宮崎県内の弁護士数も、私が登録したころから2倍になっています。
今後は宮崎でも「刑事専門」弁護士が登場するかもしれません。