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相続放棄,受理してもらえれば一安心?

2014年06月17日

谷田です。
今回は,相続放棄についてしばしば誤解されているであろうテーマについてお話をします。
最近,宮崎市内でこの点についての誤解に付け込んだ悪質な商法を見かけたので,皆さんもくれぐれもお気を付け下さい。

Aさんが,たくさんの借金を残して亡くなったとします。Aさんの相続人であるBさんが「自分はAさんの借金を引き継ぎたくないなあ。」と思ったのなら,BさんはAさんが亡くなったことを知った時から3ヶ月以内に,家庭裁判所で相続放棄手続をとることになります。これで,BさんはAさんの借金を背負わされずにすむわけです。(その代り,Aさんのプラスの財産も相続できなくなってしまいますが。)
この期限は延長も認められますが,基本的には3ヶ月と考えていいでしょう。

では,仮にAさんが亡くなったことを知った時から「3ヶ月を過ぎてから」相続放棄をしようとしたら,どうなるのでしょうか?
結論から言いますと,ほぼ確実に受理してもらえます。家庭裁判所の受付で「もうAさんが亡くなってから3ヶ月を過ぎているから,あなたの相続放棄は受け付けません」と言われることはほとんどありません。
確かに民法には,
「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」
と書いてあるのですが,ここでいう「自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは「相続人が相続開始の原因たる事実の発生を知り,かつ,そのために自己が相続人となったこと及び相続財産の一部又は全部の存在を認識し若しくは認識し得べき状態になった時」(最高裁昭和59年4月27日)とされています。
何やら難しそうですが,要するに「Aさんが死んだことは随分前に知っていたけど,Aさんにこんなにたくさん借金があるなんて最近初めて知りました。なので,今からでも相続放棄させて下さい。」という言い分が通るということです。家庭裁判所の受付では,証拠を出せと言われることもありません。
結局,相続放棄の申述は,「Aさんが死んだことはもちろん,Aさんにどんな財産・借金があるかもずっと前に完璧に知っていました。けど,相続放棄したいです」というような,わざわざ墓穴を掘るようなことを申述書に書かない限り,家庭裁判所で受け付けてもらえるのです。

では,3ヶ月を過ぎてからの相続放棄も,家庭裁判所に受理さえしてもらえればもう安心なのでしょうか?実はここに大きな落とし穴があります。
相続放棄が受理されると,家庭裁判所に受理証明書を出してもらえます。これをみると,まるで家庭裁判所が相続放棄のお墨付きをしたかのように見えます。ですが,これはあくまで「相続放棄の申述を家庭裁判所が受け取りましたよ」という証明に過ぎず,その相続放棄が有効であるという保証にはならないのです。
相続放棄が受理されても,後日Aさんの債権者が,(3か月を過ぎてから相続放棄をした)Bさんに「Aさんの借金を払って下さいよ。相続放棄をしたと言っていますけど,うちはそんなの認めませんよ。Aさんに借金があることも,あなたは早い段階で知っていたでしょ?」などと言って,裁判を起こしてくることもあります。
そして,その裁判の中で「Aさんにこんなにたくさん借金があるなんて最近知りました。」というBさんの言い分が本当かどうかを審理するわけです。この言い分が裁判で認められなかったら,BさんはAさんの借金を払わされる羽目になります。

長々と書きましたが,要するに相続放棄が家庭裁判所で受理されても全然安心できないということです。その相続放棄が有効かどうかは,その後債権者から起こされる裁判の中で決まるのです。

最近,宮崎市内のとある士業の方(弁護士ではありません)が,もっともらしいセンター名を付けて「3ヶ月経っていても,うちの事務所に任せれば相続放棄ができます!」みたいな広告を大々的に展開して,わざわざ特別料金を取っているのを見かけました。(そりゃ,相続放棄を受理してもらうだけなら誰でもできますって。)
その士業の方が,相続放棄の法的性質を知っていてそのような商売をしているのか,それとも知らずにやっているのかは定かではありませんが,どっちにしても良いことではないなあと考え,今回のコラムのテーマとした次第です。

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