谷田です。最近,「終活」という言葉を,テレビや雑誌でよく見かけるようになりました。
亡くなった時に,家族の方が困らないよう,本人が希望する葬儀の方法や,どのような財産があるのかを明らかにしたりするもので,お世話になった周りの人への配慮としてとても有意義なことだと思います。
特に,昨今の「終活」ブームもあってか,本屋に行くと「エンディングノート」というものが何種類も並んでいるのを見かけます。私も見てみたのですが,自分の財産や延命措置希望の有無,その他自分が亡くなった時に連絡して欲しい友人の連絡先を書く欄もあり,「よくできているなあ。」と思いました。
特に,弁護士の目から見ると,亡くなった方の財産・負債は,遺族の方々が一から調べるのは結構大変ですので,財産関係(と負債関係)のリスト化は是非お勧めしたいところです。不動産は,市役所で「名寄帳の写し」を取ればまだ調べがつくのですが,金融資産(預金・保険契約・株式等)や借金の場合,これらを遺族の方が漏れなく調べるのはかなり手間がかかるためです。
このように有意義な「エンディングノート」ですが,一点だけ気を付けないといけないことがあります。それは,エンディングノートに「遺産の分け方(誰に何を相続させるか)」を書いても,法的な拘束力がないということです。
遺産をどのように分けるかの意思を残しておくには,民法上決められたルールに従った「遺言」という方法でやらなくてはなりません。
せっかくどのような財産があるのかを遺族の方に伝えても,それをどのように分けるかを明らかにしておかないと,かえって遺族の方同士の紛争を招きかねません。
そのようなわけで,「終活」をきちんと完成させるには,エンディングノートだけでなく,「遺言」をきちんとすることが大事です。
なお,「遺言」は,通常「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」(他にもいくつかありますが,実際の遺言は,この二つが大半を占めます。)どちらかの方式が用いられますが,「自筆証書遺言」は方式のミスで無効になりやすいので,「公正証書遺言」の利用をお勧めします。
「どのような財産の分け方をすれば後で揉めないか」を弁護士と打ち合わせをして,公正証書遺言の方法で明らかにしておけば,自分の意思を正確に残すことができて安心です。