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被害届が取り下げられても事件は終了しない?

2015年05月03日

 中倉です。

 たまには仕事に関係する話を書こうと思います。

 親告罪という言葉に聞き覚えがある人はそれなりにいるのではないかと思います。

 世界人類みんなの大先生Wikipediaでは「親告罪(しんこくざい)とは、告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪をいう。告訴を欠く公訴は、訴訟条件を欠くものとして判決公訴棄却となる。

と説明されています。

 では「告訴」とは何でしょうか。
 同じくWikipediaによれば「告訴告発(こくそ・こくはつ)は、捜査機関に対して犯罪を申告し処罰を求める意思表示である。」と説明されています。

 ちょっと余談ですが、「ああ、告訴とは被害届を出すことなんだな」と考える人がいるかもしれませんが、違います。犯罪の被害者が被害届を作成して警察に被害を申告することが告訴として取り扱われる可能性はありますが、被害届の提出=告訴ではありません。

 さて、つまり今回の記事で何が言いたいのかといいますと、被害者が被害届を取り下げても、それで加害者に対する刑事手続が終了するとは限らないということです。

 順を追って説明すると、まず、親告罪に当たらない非親告罪については、そもそも告訴が取り消されようが被害届が取り下げられようが関係なく刑事手続は進行します。
 事実上、被害届が取り下げられたことを検察官が考慮して、不起訴処分を行い刑事手続が終了するといった流れが一般的ではありますが、これはそういうケースが多いというだけであり、法的に必然性があるものではありません。
 そして、窃盗や傷害など、一般的で馴染みの深い犯罪は非親告罪です。
 すなわち、例えば自転車を盗まれた人が犯人(正確には被疑者または被告人といいます。)から謝罪とともに自転車を返してもらい、もう犯人が処罰されなくてもいいと考えて、警察に行き被害届を取り下げたとしても、その犯人が処罰されるか否かは検察官と裁判所の判断次第ということです。
 常識的な考え方として、盗まれた人がもう許すと言ってしまえばそれで終了なのではないかと思う人は多いと思います。しかし、日本の法律は必ずしもそうなるようには作られていないのです。常識と法律が異なる場面というのは多少なりともあるものです。

 被害届は捜査機関が捜査を開始するきっかけに過ぎません。捜査が開始された以上、その後に犯人の処遇をどうするかは捜査機関ないし裁判所の判断に委ねられます。被害者の意見というのは、その捜査機関ないし裁判所の判断において考慮される事情の一つに過ぎません。

 逆に問題となる犯罪が親告罪である場合は、被害者が告訴を取り消す(告訴は取り下げるではなく取り消すというのが正確です。)ことで刑事手続の進行が不可能になり事件終了となります。親告罪の例として有名なのは、名誉毀損とか強制わいせつ等といったものです。

 私が伝えたい結論は、我田引水めいたものになってしまい個人的には気がすすまないのですが、以下のとおりです。

 もし、仮にあなたやあなたの家族が被疑者または被告人になってしまったとき、刑事手続を早期に終了させたいと考えるならば、すぐに弁護士に相談すべきです。
 被害者と示談して被害届を取り下げてもらえば刑事手続きから開放されるという考えは、そのようなケースが多いといった意味でしか正しくありません。
 個別具体的な事件に応じた対応が必要となります。被害届を取り下げてもらうことが必ずしも最適な対処になるとは限りません。

 多くの人にとって非日常である刑事手続は弁護士にとっての日常です。そのことを念頭においた上で是非一度は弁護士に相談していただければ、加害者と被害者の双方にとってより望ましい形での解決に一歩近づくことができると私は考えます。
 堅苦しい話になってしまいましたが以上です。



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